「〔少女庭国〕」

 2014-03-30
今回、「本館」に先行する読了本紹介に選んだのは、矢部嵩の『〔少女庭国〕』。
正直、これをお勧めしていいものかどうかと問われると、なかなか迷うところではあるのですけれども……
ただ、かなり刺激的な読書体験を得られる、何ともとんがった作品であるのも確かであり、それ故に「本館」では「雑記」だけではなく、別項を「読む」に立てて、より詳しく紹介することにしてもいます。

ジャンルとしては良くあるタイプのバトルロワイアルもの。
卒業式が行われる講堂へと長い廊下を歩いている途中で意識を失った女子中学生が、石でできた四角い部屋の中で目覚め、同様の境遇にある女子高生と殺し合うなどして、最後に残った1人のみがそこから脱出できるという設定から本作は始まります。
これだけだと、使い古されて手垢が付きまくったパターンですよね。
本作の場合は、そうやって強制的に異常な状況下に置かれた少女達が採る行動を描くにあたり、これまでの類似シチュエーション作品がやってこなかったアプローチを見せているのが、ミソ。

ここでそのアプローチを説明してしまうのは明らかなネタバレなのですが……
少しだけ書いておくと、つまり、この捕らわれの空間からの脱出をかけた殺し合いのデス・ゲームに与えられたルールは非情なものであるのだけれど、逆に言えば、そのルールさえ守られている状態、規定された枠組みが遵守されている状態であれば、あとは何をどうするのも参加者の勝手なのではないか、という視点から綴られている物語だ、というところでしょうか。

本作では、かなりえげつない展開、生々しい状況が降りかかるのですが、しかし終始乾いた手触りが続くのは、全体的にこの作品が第三者視点、更にいうならば世界の観察者である神の視点とでも呼ぶべきな距離感から綴られているから、か。
それが故に私は嫌悪感もしくはそれに類似する感情を本作に抱くことは無かったのですけれども、まぁ、この辺は読む人によって反応が割れるところでありましょう。

〔少女庭国〕 (ハヤカワSFシリーズJコレクション)〔少女庭国〕
(ハヤカワSFシリーズJコレクション)

(2014/03/07)
矢部 嵩
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