「ゴースト≠ノイズ(リダクション)」

 2014-03-18
電子書籍版の個人出版で発表されていた作品を東京創元社の編集者が読むことがあって、これは書籍化しなければいけないという使命感から、新鋭作家たちの作品を収めるレーベルであるミステリ・フロンティアから加筆訂正の上で刊行したという、十市社の『ゴースト≠ノイズ(リダクション)』。
今回、「本館」に先行して紹介するのは、この作品です。

引っ込み思案で人との積極的な接触が苦手な性格から、クラス内で孤立している少年が本作の主人公。
そんな彼が、席替えで前の座席になった少女から、ある日の放課後に声をかけられたことにより、久しぶりに学校内で誰か他人と話すということに安らぎを覚えるようになっていく、ということから本作の物語は始まります。
レーベルがレーベルなので、殺人事件とか大掛かりなトリックとかを予想されるかもしれませんけれども、これはそういう話ではなく日常系青春ミステリーです。

自分が何者なのかということの答えを求め、自己に対する肯定と承認とを求める十代の心理をある程度の水準以上のリアリティをもって描けているかが、この手の作品のキモとなる部分ですよね。
この作品が彼のデビュー作ということですが、作者はかなりしっかりした筆力の持ち主なので、主人公達の悩み、迷いといったものに、一定の切実さを感じられました。
登場人物に寄り添うように丁寧に紡がれる文章からは、この十市社という書き手は本作を公の場で発表する前にも幾つもの作品を書き上げていたりするんだろうなとか、読書量も相当のものなのではないかとかが想像されます。

本作に関する Amazon の書評では比喩の多用を指摘する声もあって、確かに様々なところで比喩が挿入されていて、それが良くも悪くも文体の大きな特徴の1つです。
が、これをどう思うかは読む側の趣味の問題でもあります。
私の場合にはそこまで気にならなかったですし、非常に読みやすい文章でした。
実際、作品世界に引き込まれながら読み進めていたので、300ページ弱の厚さのある本作を読了するまでに、そんなに時間を要しませんでしたし。

ゴースト≠ノイズ(リダクション) (ミステリ・フロンティア)ゴースト≠ノイズ(リダクション)
(ミステリ・フロンティア)

(2014/01/29)
十市 社
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