「夢の上 3 光輝晶・闇輝晶」

 2013-09-26
「本館」の更新に先行して紹介する読了本、今回紹介するのは、田崎礼の『夢の上 3 光輝晶・闇輝晶』です。

複数の登場人物がそれぞれの視点から1つの事件を語るという構成の本作、この第3巻を以って本編が完結となるのですが、ここには、王家に生まれた2人をそれぞれ語り手とする、2つの章が収録されています。

非常に、面白かったです。

当初の予定を軽くオーバーして膨れ上がっていく原稿の量を前に頭を抱える作者に対し、想定されていた枠を守ることよりも作品としての質を高めることの方がむしろ重要であるとして、とにかく満足の行くように執筆するようにと答えた編集サイドの判断が、これだけの物語を生み出すことに結実したということで、それは実に英断であったと言えるのではないでしょうか。

全体を通じた作品の構成に非常にこだわりを見せてシリアスで「真面目な」物語を書く姿勢から何となく察していましたが……
やはりこの人は、物語を完全に完結するまで書き上げてからでなければそれを世に問うことができないというタイプの物書きのようです。
それはその作品には大体の場合一定の完成度を期待していい、ということを意味しますが、一方で、多作な作家では無い、ということにもなるでしょう。

まぁ、私としては2~3年に1作のペースでもいいので、これまでのような、そして今回の『夢の上』のような、いや、それを超えていくようなクオリティの新作を読ませてもらえれば、それでいいかな、とも思うのです。
もちろん、常に高いクオリティを保ちつつ、早いペースで発表し続けてくれるのであれば、そちらの方が嬉しいとも言えますけれども、それはさすがに無理というものでしょうから。

他の作品を読んだ際にもそんなことを感じたのですが、多崎礼という作家は「人の心」を描くということに軸足があるというか、困難な状況に置かれ打ちのめされた人が、葛藤の中から強い意志を持って夢や目標を達成する為に立ち上がってという姿を描くことを創作活動上の1つの大きなテーマにしているのかもしれません。

ひとまず、著者の新作シリーズである『八百万の神に問う』の刊行が始まっているので、そちらも最終巻まで刊行された暁に一気読みをするのを楽しみにするとして、今はまず、『夢の上』シリーズの短篇集がもう1冊出ているので次はそれを読むとしましょう。

夢の上 3 光輝晶・闇輝晶 (C・NOVELSファンタジア)夢の上 3
光輝晶・闇輝晶
(C・NOVELSファンタジア)

(2011/05/25)
多崎 礼
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