「私という猫 ~呼び声~」

 2013-06-30
本館「雑記」で紹介する予定の書籍から1冊をセレクトしての予告紹介、今回はイシデ電のマンガ『私という猫 ~呼び声~』です。

これは、2008年の7月に刊行された『私という猫』の続巻になるのですが、5年とは、随分と間が開いたものだと思われるかもしれません。
けれど、元々が作者本人のブログで、商業的なことは考えずに不定期に掲載されていたものですから、むしとこのペースは致し方ないところでしょう。
同ジャンル作品を全て読んでいるわけでも無いので断言もしかねるのですが、この世間に、いわゆる「猫マンガ」は数ありますけれど、この『私という猫』という作品ほどシビアに徹底した視線で野良猫の生活を描いているものは、無いかもしれません。
ここには野良猫たちの「自由」と「矜持」と、むき出しの「生」と「死」とが、深い陰影で色濃く封じられています。

そんな猫達の、その自由の先にある過酷な日々。
イシデ電がそこにどのような思いを込めて本作を描いたのか。
あるいは、その受給を受けられずに餓死した親子の問題などの生活保護に係る話、ワーキングプアーその他の経済的格差拡大が進みつつある現在日本の社会、ホームレスの問題などを、人間社会の縮図の様に、野良猫社会の一部を切り取って冷徹な目と深い愛で描くこの作品に投影しているのか。
私などは本作を読んでいて、そんなアレやコレを考えてしまったのですけれども、読む人によって様々な解釈、様々な連想、思考ができる作品になっていますし、この辺はそれぞれがそれぞれに感じればいいでしょう。
描き手の内面が作品のあちこちから滲み出た、入魂の作品だと言えます。

内容的にハードですし、画にはクセがあるので好き嫌いが結構分かれるだろうと思いますが、これ、傑作だと思います。
前作と合わせて、できるだけ多くの人に読んでほしい。

ちょっと粗い画のタッチが、また作品に合っていて、マンガ的な絵柄なのに、そこに強烈なリアリティを生み出していて、そこがまた実に良いんですよ。

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