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「剣樹抄」

 2020-02-01
冲方丁といえば、以前に水戸黄門で知られる水戸光圀を主人公にした、『光圀伝』という傑作を書いています。
その水戸光圀も大々的に登場してくる作品が、今回紹介する、昨年の7月に発売となった『剣樹抄』。

帯に印刷された公式の粗筋を引用してみましょう。

捨て子を保護し、諜者として育てる幕府の隠密組織“拾人衆”。これを率いる水戸光圀は、父を旗本奴に殺されてのち、自我流の剣法を身につけた少年・六維了助に出会う。拾人衆に加わった了助は、様々な能力に長けた仲間と共に、江戸を焼いた「明暦の大火」が幕府転覆を目論む者たちによる放火だったのではという疑惑を追うが――くじり剣法の六維了助、見参!


時代小説の書き手としてもすっかり定評を得た感のある冲方丁ですが、今回のこの作品は、大江戸諜報絵巻な活劇もの。
本作の主人公はあくまで了助であって光圀ではないのですけれども、もの凄く面白くてすっかりハマってしまった作品の登場人物がこうして別作品でも重要な役割で登場するというのは、いいですね。
スターシステムというのとはちょっと違いますけれど、こういうリンクが多くの作品で行われるというのも、なかなか面白いことになりそうな気がします。

作品中で大きな位置を占めている明暦の大火といえば、別名が振袖火事。
本郷丸山本妙寺での法会で焼かれた振袖が原因で発生したという俗説がありますが、実際は本妙寺だけではなくて小石川や麹町からも火の手が上がった、同時多発の火災だったそうですね。
この火災で江戸所の天守閣は焼け落ちて、以後、再建されることは無かったわけです。
そしてこの明暦の大火には以前から放火説というものも囁かれ続けていて、本作の構想のきっかけになっていると思われます。

そういえば『光圀伝』でも明暦の大火が非常に印象的に描かれていましたっけ。

なお、本作の物語はこれ1冊では完結しておらず、今でも雑誌『オール讀物』でシリーズの掲載は続いています。
実際、かなり面白い作品なのでそれも大いに納得です。
いずれ出るであろうシリーズ2冊目も楽しみでなりません。



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