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「雪が白いとき、かつそのときに限り」

 2020-01-04
昨年発売されて一部で話題になっていた、陸秋槎の『雪が白いとき、かつそのときに限り』。
中国の作家(今は日本の金沢に在住らしいですが)の書いたミステリー、いわゆる華文ミステリーの邦訳作品ですね。
帯で青崎有吾が「純度100%の『少女』と『推理』。学園ミステリの美しき結晶。」と書いていますが、日本の新本格ミステリーに強く影響を受けた著者が、自身の体験を反映させて書くことができるからということその他の理由から取り組んだ、長編2作目の学園モノになります。

本作は、発見された死体の周囲が降り積もった雪に覆われていて、その点で誰かが近づいて殺人をすることは不可能と思われる「雪密室」を題材にしています。
その点、正しく、いわゆる「新本格」の系譜に連なる作品だと言えるでしょう。
しかし、本作の最大の特徴はそこではありません。
端的に言ってしまえば、この作品は「百合」の匂いが非常に色濃いのです。

ネットで著者のインタビューなどを読むと、彼の趣味嗜好が日本のアニメやマンガ、特に百合系統の作品にあることが分かりますが、本作は、それ等と新本格ミステリーという、趣味の世界、自分の好きなものをテンコ盛りに投入して、学園青春ミステリーという形でまとめ上げた1冊と言えます。
私が本書を読んで強く感じたのは、これは非常に情緒的な作品であるということ。
あまり詳しく書いてしまうと大いにネタバレになってしまうのでミステリー作品では絶対に避けなければならない範囲にまで言及してしまうことになってしまいかねないのですけれども、特に事件の動機のところにその傾向が強く、ここは大きく好き嫌いが分かれそう。
私としては、そこにこそ十代少女の感情の動き、迷い、悩み、葛藤というようなものが表現されているように思えて、端正かつ丁寧な文体と合わせて、とりわけグッと来たところだったりします。
青春ミステリー好き、百合モノ好きには特にお勧めの作品です。
そういう人は、発売から3ヶ月も経過したこの段階で私が推薦しなくとも、とうに本作を読んでいそうな気もしますが。

なお、本作に出てくる学生等が、会話の中に普通に中国の古典や欧米の哲学書その他からの引用を挟み込んでくるところは、これはいかにも中国らしいなと感じました。
日本人は、特に最近はそういう会話をやらないから、もしかしたらそこに違和感を覚える人もいるかもしれませんけれど、ある程度の教育を受けている中国人は基礎教養としてその辺を暗記していますし、会話の中で適時ふさわしい引用をできるということが品格があるということにも繋がるから、結構さらりと、日常会話に古典引用が入ってくるんですよね。
この辺は、文化の違いであり、それも面白いところです。



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