「スーパーカブ」

 2017-09-09
1冊丸々、いかにスーパーカブが好きかという情熱がほとばしっているのが、トネ・コーケンの『スーパーカブ』。
物語は非常にシンプルなもので、山梨の北杜市で無利子の奨学金をもらいながら高校に通う一人ぼっちの少女、小熊を主人公にして、何に対しても欲の無かった彼女がある日、中古のスーパーカブに出会うことで、その世界が開けて行く様を描く、というもの。

非常に地味で、尖った部分もほとんど無いなと思うかもしれません。
そう思うのは、全くもって当然であり、実際、内容的に地味であることは、否定できません。
とはいえ、これは、そういう派手さを求めるタイプの作品では、ありませんね。

小熊が一歩一歩成長するところ、スーパーカブが次第に相棒になっていくところ等、何気に充実した読書体験を得ることのできる、そういうタイプです。
多分、私が二輪車乗りであり、かつカブを持っている(もしくは、持っていたことがある)と、作中に出てくる色々な「あるある」を更に楽しめたのかもしれませんが、そういうのを抜きにしても、これは非常に面白く、佳作と言っていいのではないでしょうか。

ちなみに、スーパーカブはこの2017年で世界生産累計台数が1億台を突破する予定ということを以前にどこかで読みました。
本作にも、帯に「ホンダ・スーパーカブ総生産台数100000000台記念作」の文字が。
とはいえ、それで特に HONDA とタイアップをしたりとかはしていないようなのですけれども、そういうところもまた、ちょっとした好感度を覚えます。

とにかく、作者がカブに抱いている愛情が全てで、それだけにフォーカスして書かれた小説であり、その割きりが、かえってこの読後の清々しさを生んでもいる部分は、あるでしょう。
角川が運営するネット小説投稿サイト、カクヨムには、本作の第2部も掲載されていて、それも、まもなく刊行されるので、こちらも楽しみです。



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