「UFOはもう来ない」

 2017-08-26
UFOや宇宙人の目撃談、UFOに攫われてのアブダクション、更にはその母星や基地に連れていかれたり宇宙人によって妊娠させられたり、そういった妄想もしくは詐欺なんだろうなという眉唾な話。
それ等が、もしも本当に地球に来ている宇宙人が存在することから影響を受けて発生したものだとしたら、というような発想から構想が始まったのかな、と思われる、山本弘の 『UFOはもう来ない』 を読みました。

自分達の存在が地球人に対して与えている文化的汚染を懸念している地球を監視していた異星の知的生命体スターファインダーの1人、「最終シークエンス」発動の権限を持つペイルブルーが乗った小型宇宙船が衛星軌道上のデブリとの接触で推進機関に異常をきたし、京都山科の山中に不時着。
機体は被害の拡大を避けようと海上に移動してパイロットと共に爆散してしまいます。
残されたペイルブルーはその地に留まって仲間が月の裏側に設けられた基地から救助に到着するのを待とうとするのですが、不時着するUFOを追ってきた小学生3人組にその身を確保されるという事態に。
そこに更に、民放系のB級情報バラエティーのオカルトネタ担当製作会社の社長と、祖父の遺志を継ぐ美人UFO研究家、そして宇宙エネルギーとの交信を謳う新興宗教の教祖である詐欺師等が絡んでくる、というような物語です。

敢えて簡潔に言ってしまえば本作のジャンルは「ファーストコンタクトテーマのSF」ということになります。
けれども、その言葉から普通に想像するようなSFとはちょっとテイストが違っているのは、全体的にトンデモ本やトンデモ説を笑って楽しもう、というようなノリがちょこちょこと頭を覗かせているからかも。
さすがは と学会 の会長であった山本弘というべきか、時にはUFOや宇宙人に関するトンデモ話についてもがっつりとスペースを割いて詳しく説明しているので、その所為で本が余計に厚くなってしまっている側面もありそうです。
が、本作の場合はそこもまた読みどころの1つとも言える様な気がするので、これについては特に問題は無いと個人的には思っています。

更に本作の良いところは、敢えて冗談のような形態にしてきたスターファインダーの進化の過程や生態、宗教観などの文明についてしっかりとした設定を作り上げているというところ(巻末に、それが掲載されています)でしょう。
そういうところの作り込みをしっかりしているからこそ、作中で描かれている無いようにある程度の説得力が出てくるわけですね。

科学的な知識とかSFへの興味や愛が無くても気軽に読めるような物語ではあるのですが、別の意味で色々と「濃い」ので、そこが受け入れられないという人もいそうな、そんな1冊でした。
個人的には、こういうの、嫌いじゃないですよ。



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