「はるか遠く、彼方の君へ」

 2017-08-05
デビュー作の 『いまはむかし 竹取異聞』 は結構良かったな、という記憶から、ならばこれも、いつかタイミングを見て読んでやろうと思って積読の中に入れていたのが、安澄加奈の 『はるか遠く、彼方の君へ』。

現代の高校生3人が源平合戦の時代にタイムスリップして源義経や静御前と行動を共にする、という粗筋は、言ってしまえば結構ありふれたものです。
そこに独創性や新鮮さを感じることは、正直、できません。

そうであるならば、どういう料理法、味付けをそこに施してくるかが作者の個性を出す為には重要になってくるところですよね。
で、ついついそんなことを思いながら読み始めたら、どうにもそれが気になって仕方が無いという状態になってしまって、本作を読んでいる間、終始、そこがどうなっているのかと、そればかり考えて読んでいたような気がします。
つまりは作者にとっては、あまり嬉しくない読者だということなのかもしれません。
私としても、最初に余計な雑念が入ったことで、物語にそこまで入り込むことができなかったという点で、ちょっと残念なことでした。

それにしても、前作を読んだ時にも思ったのですが、安澄加奈という人は、おそらく荻原規子の一連の作品のファンなのでしょう。
読んでいて、キャラクター設定や配置、物語の持って行き方とか、そういうところに、萩原作品の影響が読み取れるような感じがするんですよね。
それが悪いということでは別になくて、誰かの影響下にあるというのは、いつまでもそこから脱することができないでいると単なる亜流で終わってしまう恐れも出るとはいえ、基本的には、若い作家の在り方としては、普通に良くあることです。
完コピのようなことをやられてはさすがにアレですが、安澄加奈の場合、デビュー作も本作も、さすがにそこまでのことはありませんから、問題無し、と思います。

基本的に善人ばかりが出てくるようなところは、ちょっとアレではありますが、児童文学の延長上にある作品だと思えば、これはこれで、特にアレコレ言うようなことでもありません。
恋愛要素の入れ方も程良かったですし、文庫で540ページほどというボリュームながら、サクッと、すらっと読み切れたのも、いいですね。
軽めの歴史ファンタジーとして、まずまず面白く読ませてもらいました。



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