「オウリィと呼ばれたころ ―終戦をはさんだ自伝物語―」

 2017-07-29
4月15日に紹介した 『コロボックルに出会うまで 自伝小説 サットルと「豆の木」』 で描かれたより前の時代を題材にした、佐藤さとる の 『オウリィと呼ばれたころ ―終戦をはさんだ自伝物語―』 を読了。

『コロボックルに~』も、今回紹介する『オウリィと~』も、どちらも作者の人生を綴った自伝作品になります。
が、前者は形式上、主人公の名前を変えるなどしてフィクションの体裁をとっているのに対し、後者はあくまで徹底して自伝、という形を守っているのが、それぞれの相違点でしょうか。

なにしろ基本、児童文学の文法が身に沁み付いている人なので、今回も文体などはそれに沿っている感じで、小説の形式にしたからといってあれこれと心理描写をしたり、細かい描写を加えたりをしていないということもあって、ちょっと、要約されたダイジェスト版を読んでいるような気になってしまうようなところがあるのも、両作品とも共通しています。
ただし、『コロボックル~』 に比べると、今回の 『オウリィと~』 はダイジェスト色が薄めに感じられるのは、フィクション性の有無と逆になっていますね。

これはつまり、ほぼ同じ語り口とペースであっても、フィクションであることにすると、その密度に物足りなさを覚えるというのが、私が「物語」に求めているものを透かしているようで、何となく面白いところです。
せっかくの自伝物語であり、ストーリーとして考えても、それなりのドラマチックさもあるのだから、そこをもうちょっとどうかすれば、と思ってしまうのは私が青春小説的なものを好きだからそう考えてしまうというのはあるでしょう。
北杜夫の 『どくとるマンボウ青春記』 とか、畑正憲の 『ムツゴロウの青春記』、高野秀行の『ワセダ三畳青春記』 辺りは、広く読み継がれるべき傑作だと思っていますし。

とはいえ、この『オウリィと~』については、これくらいドライに書いてあるからこそ「味」があるのだ、ということも言えるようにも思えます。
程よい肌触りになっている、と言い換えてもいいかもしれません。

いずれにせよ、若干タイプが異なるのというのはありつつも、この 『コロボックルと~』 と 『オウリィと~』 の2つの作品は、2つでセットなのだと考えて連続して読むべきですね。
できれば、私がやったのとは別の順番で。その方が、刊行順でもあり、内容の時系列にも沿うことになりますから。




タグ :

やはり、フルーム

 2017-07-25
今年のツール・ド・フランスは、以前にもここで書いたように、ステージ優勝や山岳賞、ポイント賞、そして総合と、それぞれの勝負で主役もしくは準主役になるだろうと期待された選手が、次々とリタイアしていくという、例年以上に厳しい展開を見せた3週間となりました。

その理由は単純では無くて、落車だったり体調不良だったり、選手により、シチュエーションにより異なっているのですが……
それにしても、ここまでメインどころがいなくなっていくツールというのは、私の記憶にはありません。
まぁ、元々、ここに全てを賭けてくるようなシチュエーションがあって、他のグラン・ツールと比べても落車なども多いのが、ツール・ド・フランスの特徴の1つではあるのですけれど。

個人的に「彼には是非、頑張ってほしいな」というように思っていた選手も多く途中のステージでレースを去ってしまって、そういう意味では、毎ステージをTV観戦していても今一つ入り込めない大会だったかもしれません。
こんなことを書いてしまうのは、一生懸命走っていた選手には、申し訳ないのですけれど。

そんなツールも先週の日曜日に今年の全日程を終え、例年通りにパリのシャンゼリゼ通りのゴールを迎えました。
「終わり良ければ全て良し」ではありませんけれども、色々とあったレースだったとしても、こうしてその一切が終わった段階でスタートからこれまでを振り返ってみると、これはこれで面白い大会ではあったなと思えるものですね。
もちろん、私の贔屓選手が大活躍できていれば、もっと面白かったかもしれないというようなことが頭をよよぎらない言えば、嘘になります。
けれども、過ぎたことが今からどうなるわけでもないですし、そこは考えても仕方がないことですよね。
「もしも」の話には固執しないで、無事に3週間を走り抜けた選手、その中で何らかの成果を手にできた選手のことを、讃えるべきでしょう。

では各賞の結果を、簡単に。

今年の総合優勝を勝ち取ったのは本命中の本命、チームスカイのクリストファー・フルームでした。
正直、可愛げのないくらいの強さです。
でも、歴代の偉大な勝利者を振り替えてみるに、チャンピオンというのはこういうものですよね。
勝つべくして勝つ、というのは、言うほど簡単なことでは無い、というのは、誰しも分かることですし。
フルームの走りのスタイルはそこまで好きでは無いのですけれども、人間的にはなかなかの好人物ですし、この勝利は、やはり素晴らしいものであります。

スプリンターが手にするポイント賞はチーム・サンウェブのマイケル・マシューズで、山岳賞は同チームのワレン・バルギル。
複数の特別賞ジャージを同時獲得というのは、チームとしては(本当に色々なことがあったツールとはいえ)大成功だと言っていいでしょう。

そして最後、新人賞はオリカ・スコットのサイモン・イェーツが獲得しています。
彼は昨年の新人賞だったアダム・イェーツの双子の兄弟。これはちょっと面白い話ですよね。こうして双子が2年連続で新人賞を獲得というのは、100年を超える長いツールの歴史の中でも、さすがにこれが初めてのことになるらしいです。


公式サイトはこちらから

タグ :

「血と霧2 無名の英雄」

 2017-07-22
多崎礼が、以前から一度書きたいと思っていたという、ハードボイルドな作品。
満を持してそこにチャレンジした作品の後編にあたるのが、今回、「本館」に先がけた読了本紹介に選んだ、『血と霧2 無名の英雄』です。

端的に言って、非常に面白く、優秀なエンターテインメントでもある作品でした。
が、ここでその内容について何か書いてしまうと、この作品をこれから読もうという人にとって興醒め極まりないことになってしまいそうなので今回は避けておきます。

一言でコメントするならば、これは、最後までハードボイルドであったと同時に、深く一途な愛の物語であったと言えるでしょう。
この、決してハッピーエンドとは言えない終わり方をどう受け止めるかは、読者それぞれによるところではありますが、私としては大いに満足のいく内容だったと言えます。
それに、ハードボイルドに攻めるのであれば、むしろ当然こうなるべきだとも思うのです。
なるべくしてなる、というか、このテーマでこういう展開であれば、これしかない、という感じ。

全6話で構成されている物語は、もっと丁寧かつ細かく描いて行こうと思えば、それはそれでできたのでしょう。
けれども、むしろ、必要なことのみを絞って描いてこのボリュームに抑えたことで、ハードボイルド的なストイックさが増したようにも思えます。
それは、本作の場合にはむしろプラスに働くことですよね。

ちなみに、そんな本作は読者にもかなりウケが良かったようで、(元々の部数がそれほど多くなかったということもあるかもしれませんけれど)結構順調に重版もされたようです。
ずっと作品を追いかけている好きな作家だけに、新たな出版社、新たなレーベルでの仕事で、新たな読者も開拓できていればなと思うのですが、さて、どうなっていますでしょうか。
重版こそがその証である、ということなら、何より嬉しいですけれど。

ともあれ、早川書房的にもこのセールスは満足の行くものであったというのは、おそらく間違いないでしょう。
となれば、全3部作として構想されているという本作の第2部、第3部の刊行も大いに期待されるところになります。
まぁ、一度に一作品にしか手を付けれないという多崎礼が、今は別の作品を書いている途中ですので、第2部が出るとしても、そちらが終わってからになるのは、ほぼ確実ですが。

その場合、 それまで早川書房と読者が待っていてくれるか、例えば1年後、2年後に第2部が出ることになったとして、それでも読者がついてきてくれるのか、どれがちょっと心配にもなりますけれど、ここは、なるようになる、と思うしかありませんね。





タグ :

2017年 夏クール 放送開始 雑感 その2

 2017-07-20
この7月、つまり、2017年夏クールに放送が始まったアニメ新番組の簡単な感想、今回は、その第2弾になります。
これで、今期の新作については、私が視聴してみたものは一通り感想を書いたことになる、かなぁ。

1) セントールの悩み

原作は、萌え路線の日常系作品と見せかけて、実は背景にかなりシリアスでポリティカルなネタを隠している所が特徴なわけですが、さて、このアニメでそちらの方向は、どこまでやるつもりなのでしょう。
ひたすら萌えを追及するというのでも、それはそれでアニメ化としてはアリなように感じられますけれど、『セントールの悩み』 といえば、形態差別とか、種族差別、種族間紛争といった要素あってこそ、とも思うので、そこはやはり、このアニメでもある程度しっかりと描いておいてほしいんですよね。
そういう、ダークなところがあるのが、魅力なわけですし。

2) プリンセス・プリンシパル

『セントールの悩み』とは逆に、思っていたよりハードだったのが、こちらの作品。
最初に新番組情報でキャラデザインとストーリーのアウトラインを観た時には、これは、あまり私の好きな方向には行ってくれないかもしれないな、とも思ったのですけれども、蓋をあけてみたら、いやいや、これは、いいですね。
この作品の場合は、どこまでハードに行けるか、どこまでシビアに行けるか、が勝負どころになりそうな気します。
出だしの掴みは、ものすごくいい感じでした。

3) ボールルームへようこそ

原作の雰囲気を、比較的再現できていた、かな……?
多々良 は、もっと情けない声のイメージでしたけれども、まあ、でも、今回のこのアニメくらいの感じが、ちょうどいいのかもしれません。
原作のどの辺までのアニメ化がされるのか、それは調べていないのですけれど、ちーちゃん は、出てくる、んですよね……?
彼女の存在も、この作品にとっては大きいと思いますし。

タグ :

2017年 夏クール 放送開始 雑感

 2017-07-18
今年も夏クールの新番組が放送を開始していますので、その簡単な感想を、いつものように書いてみます。
掲載順は、例によって視聴順であり、そこに特に含みはありません。

1) 異世界食堂

異世界モノの中の、よくあるパターンの作品のアニメ化。
どの作品が元祖なのかとか、そういうのは調べていないのですけれども、結局のところ、そこにあまりこだわっても仕方が無くて、その作品が単体で面白ければ、それでいいのではないかという考えも成り立ちますね……
で、この 「異世界食堂」 なのですけれども、とりあえず、雰囲気がそれなりに作れていたのではないでしょうか。
雰囲気だけで、そこにプラスアルファがあるわけではない、というのが第1話、第2話の感想なので、これだけだとちょっと厳しいかな、という感じなのですが、そこが今後どうなるのか、が勝負でしょうか。

2) メイドインアビス

雰囲気という点では、こちらは満点。
こちらの問題、というか不安点は、このクオリティーをきちんと最後まで保っていられるかどうか、というところ。
それと、原作が連載継続中ですから、物語が最後まで描かれない、ということが確定的なのが、個人的には、もったいなぁと思っています。
個人的には、このスタッフ、そのクオリティーで、『ハクメイとミコチ』辺りもアニメ化してもらいたいな、なんてことも思ってしまいました。
結構、先が楽しみな作品だと考えています。

3) 将国のアルタイル

うーん。期待していたようには、ピンと来ない第1話でした。
神聖ローマ帝国とかオスマントルコとか、その辺りがモデルになっているのだろうなということで、王朝の興亡ネタが好きな私としては、大河ドラマ的なものが観られるのではないか、というように思っていたのですが、少なくとも出だしでは、そんな風では無かった、かなぁ。
舞台設定とか、キャラ配置とか、大きなドラマになりそうな要素は揃っているのだけれど、今一つ、とっかかり部分に魅力が足りないと言えば、分かりやすいでしょうか。
もうちょっと視聴は続けますが、その辺り、盛り返せるかどうか……。

タグ :

「メアリと魔女の花」

 2017-07-16
基本、ジブリの新作を映画館に観に行く、ということからはすっかり遠ざかっていた私ですが、先週末に公開が始まった 『メアリと魔女の花』 については、久しぶりに、劇場のスクリーンで観てみようかなと思いました。

いや、同作が、色々な意味でジブリ作品では無い、ということは、知っています。
スタジオポノック第1作、という表現を使う方が妥当だということは、言うまでも無いことでしょう。
そこには、宮崎駿も、高畠勲も、いないのですから。

しかし、ポノックは、そしてこの 『メアリと魔女の花』 は、誰がどう見たってジブリの系譜がそのまま繋がっている作品であり、その意味では、ジブリの新作と言ってしまっても過言では無い……かどうかは分かりませんが、このスタジオ、この監督、このスタッフ、そしてこの作品を語る時に、ジブリのことを抜きにはできないでしょう。
で、ジブリ系統の作品で、かつ、別作品ででかけた映画館で予告編を観た限りでは、実は、この作品にはあまり触手が動いていませんでした。
どうせ、いつもジブリテイストだろうし、1年もすればTV放送されるだろうから、その時でも別にいいんじゃないか、とか、いっそ、TV放送もどうでもいいかなぁ、というくらいに、関心が薄かったんですよね。
そんな私が、それでも重い腰を上げた理由は簡単かつ単純。
ジブリの制作部門が閉鎖されて、その後の道を模索する中で、ならば自分たちで新たなスタジオを立ち上げて新作を作ってやろうじゃないか、という気概を応援してあげたいな、と感じたからに、他なりません。
やっぱり、チャレンジャーの背中は、少しでも後押ししたくなるじゃないですか(突き落としたくなる、というわけでは無いですよ、もちろん)。

そんな感じで、観に行った 『メアリと魔女の花』。

王道の作品、でした。
物語もシナリオも、後期ジブリ作品っぽいなぁ、という印象が強かったのは、まぁ、実質的にジブリの後継者であるポノックの作品なので、当然と言えば当然のこと。
『借りぐらしのアリエッティ』 も 『思い出のマーニー』 も、どちらもあまりちゃんとは観ていないのでアレですが、出てくるキャラクターの瞳が、(かなりの老人のものも含めて) 妙にキラキラしているのに、違和感というか、ちょっとした気持ち悪さみたいなものを感じてしまったのは、もしや、米林監督の絵柄、なのかなぁ……?
一部、演出がオーバーで鼻についたのも、個人的にはマイナス点だと思います。

しかし、全体としては、丁寧にしっかりと作った、正統派なアニメ映画、ということになるでしょうか。
ジブリが好きだった人であれば、観て損はしない、いい作品ではないでしょうか。

もっとも、後期ジブリの、良いところも悪いところも、そのまま受け継いでいるのは、フレッシュさは無いですし、今後もそれで行くつもりなのかどうか、宮崎駿のコピーから脱するつもりがあるのか、無いのか、は、大いに気になるところですが。



タグ :

「彼女の色に届くまで」

 2017-07-15
似鳥鶏の 『彼女の色に届くまで』 は、画家を目指す画廊の息子である高校生の主人公の緑川礼と、ふとしたきっかけで彼と知り合った、無口で謎めいたところのある、そして絵が物凄く上手い同学年の少女、千坂桜とが、絵画に関連して起こる様々な事件を解いていくというミステリー。

こういう作品の常として、個々のエピソードそれぞれで特定の絵画が取り上げられていきます。
そんな中で、本作がちょっと他と違うところは、その絵画そのものに関して何らかの事件が起きる、あるいはその絵画に絡む謎が解き明かされる、というのではなく、作中に登場する架空の画家の架空の作品について起きる事件について、探偵役である千坂が世界的な名画をヒントにして、事件の謎を解く、というところでしょう。

そう言われても、それがどういうことなのか分からない、という人もいらっしゃるかと思いますが……
これは、実際に本作を読んでいただく以外の方法で、ネタバレを防ぎつつ説明するというのが、なかなか難しいなぁ。
初読時に感じる、「ああ、なる程、そういうことか」という驚きを削いでしまってもいいのであれば、書きようもあるのですが、その辺り、私の力不足で、すいません。

なお、作中で登場した名作絵画については、サイズは小さいものの、巻末にカラー印刷で図版が載っているというのは、新設設計でいいですね。
ちなみに、その中に1枚だけ作者名がないのがあるので、これはどういうことだろうと思って調べてみたら、これは実際、作者が不詳ということらしいです。

また、もう1つの本作の特徴として挙げられるのは、作中での経過時間の長さでしょう。
高校生活から始まるミステリーといのは、とかく、短い高校生活3年間の間に、主人公の周辺で立て続けに事件が起きるという不自然さが付き物だったりするわけです。
そこが、本作の場合は全部で5つあるエピソードについて、1つが終わって次に進むたびに、しっかりと時間が経過しているので、主人公達が高校時代、大学、そして社会人になるまでを描く作品となっているのです。

ボーイ・ミーツ・ガールな恋愛モノとしてはどうかというと、それだけの時間が作中で流れるわけですから、その辺も、なかなかもどかしい関係ながらも、しっかりと描かれています。
この手の作品は人気が出た場合にシリーズ化する、というのも考えられて書かれたりすることもあると思いますけれど、本作の場合、最終第5話で色々なことにかなりきっちりと区切りがつけられており、ここから更に続きを書く、というのが、ちょっと想像しにくい感じになっています。
主に「ラブ」な部分で不満が残る、という人もいるでしょうけど、これは読者それぞれが好きに想像していけばいいんじゃないかな、というのが、私の感想。
最後に明かされる真実も、そう来たか、という感じで楽しませてもらいましたし、これは、結構なお勧め作品です。



タグ :

今年も、荒れていますね……

 2017-07-12
現在、フランスの地で開催中のツール・ド・フランス。
自転車ロードレースの世界では年間で最大、かつ最も重視されるレースだと言ってしまってもあながち過言では無い。
そんな非常に大きなビッグレースも、中盤に入ってきたというところです。

ツールは毎年、序盤に大きな落車が起きるのがパターンになってしまっているようなところがあります。
そんなことが習慣づいてほしくはないのですけれど、今年もその呪縛から離れることはできなくて第1ステージから有力選手が落車してしまいました。
気合が入るのも、緊張するのも分かりますし、普段通りで冷静にいろ、と言われても、それが難しいというのは、よく分かりますが……

今年は序盤から天気が悪いというのも、また、落車→リタイアという流れに加速をかけた模様。
あちらの舗装は日本とは違っていて、雨にぬれると非常にスリッピーになる、という話はしばしば耳にするのですけれども、以前に私が実際にベルギーに行った時は、さて、どんな感じだったっけ?

1回目の休息日が明けて、全部で21あるステージのうちの10ステージ目までが終わった現段階での総合首位は、優勝候補筆頭であるチーム・スカイ、クリストファー・フルーム。
総合を彼と争うと目されていたライバルが、落車からの骨折リタイアをしてしまったり、ジロ・デ・イタリアとの連戦で疲れていたり、コンディショニングが上手く行っていなかったりして、このまま彼が総合優勝をする可能性がかなり高いのではないか、と思わせられます。
ちなみに、ポイント賞と山岳賞とは、それぞれの最有力候補の選手が、失格処分とリタイアと、その理由は異なりますが、どちらもレースを去ってしまっているので、こちらのこの先は混沌としています。

レースはこれから後半戦を迎えて行くわけですが、どうか、トラブルはそろそろ打ち止めになってほしいものです。


公式サイトはこちらから

タグ :

太宰

 2017-07-10
「太宰は言った……」 と書き出すと、まるで先月末に終わったアニメ 『月がきれい』 の主人公のようですが、太宰の墓参りもしたことだしね、というわけで、今度は、太宰の最後の地を訪れてきてみました。

三鷹駅の南口から井の頭公園方向に、玉川上水沿いを少し歩いて行った先に、その場所はあります。
彼が入水自殺をしたのは1948年なので、ごく単純に計算をすれば、今からおよそ70年前のことだった、ということになりますね。
三鷹駅からは、徒歩で5分というところでしょうか。

玉川上水沿いにまっすぐ歩いていくだけなので、迷うようなところではありません。
特に目立つようなモニュメントがあるわけではなく、玉川上水とは反対側(南側)の歩道の一角、その辺りで太宰が入水したのだろうという場所に、彼の故郷である青森県五所川原市金木町産の玉鹿石(ぎょっかせき)が置かれています。
一応、横には表示板もあるのですけれども……
それと思って探しつつあるくくらいでなければ、うっかり見落として通り過ぎてしまいそうなくらい、ひっそりと設置されているという印象を受けました。
三鷹市が、これについて積極的に宣伝をしようと思っていない、というわけではなさそうですが、道や町の雰囲気を壊さないようにしている、のかな?

その向かい側辺りの玉川上水の写真も、合わせて撮影してみたのですけれども、今は水量もそれ程ではないように見えます。
太宰が入水した当時は、これとは随分と様子も違っていたのでしょうね、きっと。




タグ :

「魔導の福音」

 2017-07-08
今回、「本館」に先がけて紹介する読了本として選んだ 佐藤さくら の 『魔導の福音』 は、以前に紹介した 『魔導の系譜』 に続く「真理の織り手」シリーズの第2作。
物語の舞台となる国家と主人公は第1作からは変わっているのですが、時代は同じで、後半には前作の主人公も登場してくる、という作りになっています。

ライトなファンタジー、異世界モノ等が主流となっている現況の中で、かなり骨太でシリアスな物語を展開した前作。
これはその続巻となるシリーズ2冊目ということで、どんなストーリーを提示してくるかと、ちょっと構えて読み始めたのですけれども、今回は、前半部分において、地方の小領主の息子が都で学ぶ中で新たな友人等と出会い青春を謳歌するというような学園モノ的なテイストもあったからでしょうか、かなり読みやすかったです。
それなりの厚みと、1ページ当たりぎっしりと活字が詰まっている文庫であるにも関わらず、想定以上にすんなりと最後まで読み終えることが出来ました。

話そのものは第1作目も今回の第2作目も等しくかなり面白いのですが、読みやすさ、という点では、こちらの方が圧勝という感じです。
それは、読者に物語を届けるのにプラスに働きますよね。
何より、読んでみようかな、買ってみようかな、と思ってもらう為には、これって、かなり重要なことではないでしょうか。

自分の書きたい世界を全力で描いたのは解るけれども、少々生硬なところもあった 『魔導の系譜』。
それに対し、本作の執筆に際しては読者の存在をより意識するようになったのかとか、そういうことは不明ですけれど、こういう感じできてくれるのであれば、シリーズをこの先も追いかけてみようかなと、そんなことを思いました。

「魔導」というものの扱い方等の世界設定、キャラクターの魅力、そして物語の読み応えと、3つの要素がなかなかのレベルでまとまっている、いい感じの1冊です。



タグ :

最低野郎たちの物語

 2017-07-06
前回のエントリーで、この6月に放送を終えた番組の簡単な感想を書きましたが、実は、あそこでは採り上げなかった番組に、もしかしたら一番、毎週の放送を楽しみにしていたかもしれない、というものがあります。

それが、TVK(テレビ神奈川)で再放送をしていた、『装甲騎兵ボトムズ』。

確かに、今見ると、色々と古臭いところもありますが……
これが、抜群に面白い。
1クールや2クールで終わってしまう番組を見慣れてしまっている状態で、4クールをかけてじっくりと物語を描いている作品は、かなり新鮮でした。
一見、無駄に見えるようなエピソードも、実際物語の本筋にはほとんど関係がないシーンも、こうして改めて最初から最後までを再見してみると、作品を豊かにし、キャラクターを掘り下げるのに非常に効果的だったなぁ、ということに気が付かされます。

やっぱり、たまにはこういう、1年を費やしてじっくりとストーリーを紡ぐような作品があってほしいなぁ。
それも、できれば、かなり渋めのものが。

タグ :

2017春クール 最終回 雑感

 2017-07-05
番組改編期がやってきました。
いつものように、この時期は、放送が終了した番組の簡単な感想を、最終回を観た順番に書いていきたいと思います。

1) 有頂天家族2

原作ではラストシーンが弁天様と矢三郎の会話でしたが、アニメ版は、矢一郎と玉欄の結婚式、二代目と矢三郎の会話、そして海星と矢三郎と狸谷山不動のおばあ様との会話で終了。
原作の、ちょっと寂寥感の残るラストも大好きだったのですが、これはこれで、後味がすっきり爽やかで満ち足りた感じになって、良いですね。
二代目との会話の、私の一番好きなところが省略されていたのは、ちょっと残念ですが。
三部作の完結編も、こうなるとアニメが非常に楽しみになってくるのですけれども、何しろまだその部分の原作自体が書かれていないので、無事にアニメ化が成るとしても、まだまだ当分先、になってしまうのでしょうね……。
第1作目もそうでしたが、今回のこれも、実に素晴らしいアニメになっていたので、もしも第3部が刊行された暁には、是非とも、このままのスタッフでアニメ化してほしいものです。

2) ID-0

なかなか良いSF作品でした。
個人的には、もう少し物語展開にダイナミズムが感じられてもいいのかなとも思いましたが、でも、1クールであれば、こんなもの、かもしれません。
オリジナルな設定、ガジェットについての説明もしっかりできていましたし、短い中に上手く話がまとまっていたのは、実に好印象でした。
演出も、渋めにまとめられていて、作品の傾向と合っていましたし、これぞプロの仕事、という感じですね。

3) リトルウィッチアカデミア

名作アニメシリーズなどを担当していた島田満がシリーズ構成、メインライターをやっていただけあって、安定して、いい話を見せてもらいました。
最初のOVA、劇場版ときてTVシリーズと、順調にグレードアップ(?)してきた作品も、これを以って、とりあえずの結末を迎えたことになるわけですね。
ラストのミサイル云々は、ちょっとリトルウィッチアカデミアの作品世界には合わないような気がしないでもありませんでしたが……
なかなかベタな展開がツボにはまる、いい最終回になったと思います。
これは是非、第2シーズンとか、期待したいところです。

4) 月がきれい

最後まで、見ているとむず痒くなってくるようなピュアさが続いた作品でした。
それが悪いというわけでは無くて、むしろ、そここそが良い、というように感じられる、今どき、かえって新鮮で、大いに楽しませてもらいました。
何より、悲恋になったりせず、2人の恋がそのまま続いていることが描かれたエンディングは、気持ちいい余韻をもたらしてくれたと思います。
こういう作品が定期的に制作されると嬉しいなと思うのは、私が個人的に、こういうベタでピュアな恋愛を丁寧に描いたモノが、昔から結構な好物だからなのですが、今作が評判がかなり良かったことで、企画が通りやすくなったというのはあるでしょうし、ちょっと、その辺を期待してもいいのかな?

タグ :

「ILC/TOHOKU」

 2017-07-01
震災によって被った甚大な被害からの東北地方の復興と科学振興の為に、北上山地の地下への誘致を目指しているという国際リニアコライダー(ILC)。
これは、全長約30キロメートルのトンネル内で電子と陽電子とを衝突させることで、人工的にビッグバン状態を再現して、宇宙の誕生や素粒子の起源について研究をしようという巨大な粒子加速器のことです。

今はまだ実現していない、このILCの建設が成された近未来を舞台にして、小川一水、柴田勝家、野尻抱介という1960年代(野尻)、70年代(小川)、80年代(柴田)生まれの3人のSF作家が作品を書きおろししたというアンソロジー本が、今年の2月末に刊行された 『ILC/TOHOKU』。

今は亡きソノラマ文庫時代に出会ってから、その著作をずっと追いかけている小川一水。
その小川一水がファンだからということで読み始めて、今では、全てとは言わないものの、それなりに著作をそろえた野尻抱介。
最近知って著作を少しずつ読んでいる、デビューして間もない柴田勝家。
そんな、私が好きだったり注目していたりする3人が書いているアンソロジーとは、これってどういうご褒美だろう、という感じです。当然、これを買わないということはあり得ません。

と言いつつ、購入してから数か月は積読で置いておくことにはなったのですが……
それでも、実際に読むのを大いに楽しみにしていた1冊ですから、かなりわくわくしながらページをめくりました。

3作品の中では一番スタンダードなアプローチかな、と思えるのが、野尻抱介の「新しい塔からの眺め」。
科学技術の進歩への信頼、一見したところ私たちの日常生活にはほとんど関係ない、何だったら「益を生まない」と言ってもいいのかもしれない(けれども巨額の費用を要する)研究へのポイティブな視線、そういったものが感じられて、なかなか良かったです。

柴田勝家の「鏡石異譚」は、ILCにおける実験にタイムトラベルネタを絡ませてきた一作。
本作において主人公が体験するタイムトラベルというものが、実際にはどういうことだったのか、というのがミソで、なる程、こう来たか、と楽しく読ませてもらいました。

この本を買うにあたって一番楽しみにしていたのが、小川一水の「陸の奥から申し上げる」。
ILC を建設する為に北上山地の地下で岩盤を掘削している現場で、かつてこの地を支配していた奥州藤原氏の配下、中尊寺金色堂建設の指揮を執ったという物部清国を名乗る老人が現れて、工事の中止を要請してくる、という、他の2作とはちょっと異色な要素のある出だしから始まる物語でした。
今回の3作品の中では、これが一番面白かったです。

三者三様の作品を読むことができますし、それぞれにお勧めできる作家ですので、この 『ILC/TOHOKU』、かなりお得な1冊ではないでしょうか。
値段的にも、そんなに高いわけではない、妥当なものですし、これは良企画ですね。



タグ :
≪ トップページへこのページの先頭へ  ≫