「となりの革命農家」

 2017-04-01
それが作家としての1つのテーマになっているのかどうかは、分からないのですが……
以前に紹介した 『限界集落株式会社』 とその続編である 『脱・限界集落株式会社』 同様、現代日本の農村(及び農業)の置かれている状況と、その抱える問題の解決策の模索を題材にしているのが、黒野伸一の 『となりの革命農家』 を、今週は紹介します。

今回のネタは、従来よりある農薬を使う慣行農法から有機農法への転換と、異業種からの農業法人参入のあるべき姿とは、というところでしょうか。
その為、Y県大沼市を舞台にした物語は大きく2つの視点、2人のキャラクターを中心に進んでいきます。
まず、農家の家に生まれてお決まりのように一度は東京に出たもののそこでの生活に馴染まずに帰郷、今は道の駅で販売員をしている小原和也。
彼は自分で作った野菜を直売場で売ってくれないかと持ち込みをしてきた少女と出会い、その彼女と共に有機農法に取り組むことになります。
続いて、大沼氏に進出した農業生産法人アグリコ・ジャパン部長の上田理保子。
親会社である東日本フーズでは大学を卒業して就職をしてからわずか3年で役付きになるなど異例の出世をしていた彼女は、自分の上司である常務と専務との社内の権力抗争に巻き込まれる形でアグリコ・ジャパンに出向することになったのですが、赤字続きのここを黒字化して実績を築き、晴れて本社に呼び戻された暁には、自分を追い出した元専務の社長に辞表を叩きつけてやろうということを、その野望としています。
やがて大沼市に、Y県の主導で農業用水路の整備と農道の拡張を行おうという公共事業の話が持ち上がって……というのが、物語の流れです。

水路整備と農道拡張ですから、通常でしたらむしろ農業の効率化や生産量の増加に繋がる話です。
もちろん用地買収などで問題が全く無いとは言わないものの、一般的に、全体としてはその地域にとってはむしろ良い効果が見込まれることだと言えるでしょう。
しかし、それでは物語が盛り上がらない。
ですので、当然この公共事業の裏側には表沙汰にできない本当の目的だったり、利権や汚職だったりといったものが絡み合って来て、そこが本作のヤマ場になります。
その辺の詳しいことは(バレバレな気もしますが)ネタバレ防止の為にここでは書かないでおきますけれど、ベタながらも、いい感じの物語で、適度な恋愛要素も盛り込まれていてエンタメ小説として押さえるべきところは押さえており、面白く読ませてもらいました。

ただ、難が無いわけでは、ありません。
ネタとして浮かんだものを一つの物語に上手く組み上げたとは思いますし、農業法人による大規模農業との比較として個人農家による有機農法を持ってくるのは分かるのですが、作品中で、それぞれがそれぞれに別の物語を描いていて(乖離しているとまでは言わないものの)今一つ合流しない感があるのは、残念です。
そこら辺がもっと上手く消化できていれば、更にいい作品になったのにな、と思いました。



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