「泣くなブタカン! ~池谷美咲の演劇部日誌~」

 2017-02-25
今週紹介する、青柳碧人の『泣くなブタカン! ~池谷美咲の演劇部日誌~』は、シリーズ3冊目にして最終巻。
非常にざっくりと内容を説明するならば、前2作品で強烈な個性を放っていた早乙女先輩たちが卒業し、最高学年の3年生になった主人公の演劇部生活を描く内容となっています。

ちなみに今回は、帯にも背表紙のあらすじ紹介にも「青春ミステリ」の文字がありませんでした。
全4章のそれぞれが軽く謎解きの形式にはなっていて、一応「日常の謎」系と言えなくもないかな、という感じではあるものの……
作中に読者に必要十分なヒントを与えて、真相を独自に推理することを可能にしておくというミステリーの文法から考えると、これをミステリーだと言うのはさすがにちょっとアレかなという判断がなされたのかも。

とはいえ、そのことと本作が面白いか面白くないかということの間には特に関連性はありません。
青春部活モノとしてはきっちりと楽しませてくれましたし、個人的にはもともと第1作目からこれをミステリーと称することには疑問を持っていたというのもあって、その辺は、まぁそうなるよね、という感じです。

ストーリーを読者に楽しませる、という点ではしっかりしている本作。
私が今回一番評価したいのは、高校生活と部活道との結末を、よくあるような美辞麗句的なものに終わらせず(そういう作品は、それはそれで好きなのですけれど)、そこに一定のリアリティーを持ち込んできたことです。
具体的に書くのはネタバレにもなるので本来は避けるべきではありますが、そこを敢えてちょっと触れるとするならば、例えば大学受験と部活動のどちらを優先すべきかとか、高校卒業後も演劇を続けようとする人間がどれくらいいるのかとか、そういった話。

もともと出だしからして、いくら高校演劇とはいえ、経験の全く無かった人間が突然舞台監督なんて重要な仕事をこなせるものだろうか、というリアリティー欠如に関する疑問を内包して始まっているシリーズでしたけれども、それも、このラストで差引プラスになった、かな?

 泣くなブタカン!
 ~池谷美咲の演劇部日誌~

 (2016/11/28)
 青柳 碧人
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「ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-」

 2017-02-21
何かと仕事が忙しい時期になってきているのですが、休日返上で出勤しなければならずに、本当に身動きができなくなるくらいバタバタするようりも前に行ってしまおうと、公開されたばかりの映画 『ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』 を観てきました。

原作読者、またはTVアニメの視聴者だけをターゲットにして作品を作る場合に楽なのは、舞台設定や状況説明、キャラ紹介などが一切いらず、いきなり本題に入れるというところにありますよね。
とはいえ、それは逆に言えば初見を全く切り捨てることにもなってしまうわけですが、まぁ、SAO くらいの人気であればそれで問題ない、という判断なのでしょう。
それはそれで、アリだとは、思います。
問題は、これまでの物語の中でのサブエピソードというようなものでは無いような新規のエピソードを持ってきて、それを映画の枠内でちゃんと物語として語りきれるのか、というところで、そこが、私が劇場に行く前に一番危惧していたところでした。
中途半端に駆け足のモノを見せられても、それは嫌だな、という。

で、実際の映画がどのようになっていたのか、です。
ネタバレにならないように軽く説明をすると……上手く綺麗にまとめてきたな、というか、思っていた以上に、物語としてきっちりと成立している作品でした。
もちろんそれは前述のように、TVシリーズにおいて基本的なことが語られているからこそ可能になったことであって、だからこそ2時間程の上映時間内に一通りのストーリーを、ダイジェストのようにならずに入れきることができた。
とはいえ、全くの新規でエピソードを組み立てようとしたならば、それはやはり難しい。
そこを考慮した結果なのかどうか、というのは分からないのですが、今回の映画は、これまでTVで放送されてきた3部の全て、特に第1部の内容にかなり密にリンクしていて、細かい説明はそれ故にパスされる、というような構造になっています。
それは半面、私が当初予想していたよりも、一見さんお断りな性格が強かったということでもあります。
これから本作を観に行ってみようかな、ということを思っているような人は、ですから、その点は事前に了承しておいた方がいいでしょう。

それを分かった上で観るのであれば、この 『ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』 は、画は綺麗で演出もいいですし、アニメーションとしての出来は非常に高い良作である、と言えると思います。
特に、シリーズのファンだという人であれば、間違いなく大満足できるはず。

エンドクレジットの後のオマケ部分は、SAOというシリーズとしては、今後の展開もあるのか、と期待させるという点で、アリです。
まぁ、それが実現化しなければ、1本の映画としては無用の蛇足だ、という側面の方がクローズアップされることになってしまうのでしょうが、それは、これからの動きを見ていかなければ分かりません。


公式サイトは こちら から

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追悼 佐藤さとる さん

 2017-02-19
「コロボックル」シリーズで知られる児童文学作家の 佐藤さとる さんが、9日に亡くなっていたのだそうです。
御年、88歳。
報道によると死因は心不全で、葬儀は近親者だけで行われたとのこと。

佐藤さとる さんの作品は小学校の頃から愛読させていただいて、日本の児童文学といえば誰の作品を選ぶか、と聞かれたら間違いなく一番最初に名前を上げるだろうと思うくらい、好きな作家の1人です。
数年前に復刊ドットコムから出た 『佐藤さとるファンタジー全集』 は、もちろん全巻揃えました。

年齢的なことを考えれば、そして死因などからも、おそらく、これは天寿を全うしたということに近そうな気がしますので、残念だとか、悔しいとかいうような気持ちは不思議と湧いてこないのですが……
ただ、やっぱり、寂しいものはあります。

面白い物語を、私の幸福な子供時代の読書を、本当にありがとうございました。

 コロボックルに出会うまで
 自伝小説 サットルと『豆の木』

 (2016/3/15)
 佐藤 さとる
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……で、そんなことを書いていたら、今度はディック・ブルーナ氏の訃報が。
ブルーナは、佐藤さとる よりも1歳年上の89歳ですが、これくらいは誤差のようなもので、ほぼ同年齢と言っても差し支えないでしょう。
死因として発表されているのは、老衰。
段々と弱って行って、最後は静かに息を引き取った、という感じなのでしょうか。
それは、亡くなり方としては、ある意味で理想形の1つ、かもしれません。
とはいえ、こちらも寂しくなる話であることに変わりは無く、つまり、私の子供時代を彩った様々なものをこの世に送り出してきた方々が、それぞれに鬼籍に入られて行ってしまうような、そんな時代になってきた、ということでもあります。

こればかりは、やむを得ないことではあるのですけれど。







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「十二人の死にたい子どもたち」

 2017-02-18
第156回直木賞のノミネート作品になった(そして受賞を逃した)、冲方丁の 『十二人の死にたい子どもたち』 が、今回の「本館」更新に先がけて紹介する読了本。
著者初めての現代長編ミステリーということで、そのタイトルを見れば分かる通り、レジナルド・ローズの『十二人の怒れる男』と、そのオマージュとして製作された三谷幸喜の『12人の優しい日本人』を踏まえて書かれたものであることは明白です。
そういえば、以前にどこかのインタビューで、彼が『十二人の怒れる男』のことを絶賛していたような記憶があります。

特にそれを意識しての事では無いものの、図らずも作家生活20周年記念作品となったということはご自身のブログに書かれていましたが、そこには、本作は発案してから書くまでに12年程かかり、更に雑誌『別冊文芸春秋』に1年ほど連載するという過程を経て、ようやく形になった、とも書かれていました。
彼にとっては、それだけ、大事にしてきた構想ということですね。
確か、本屋大賞を受賞後、映画化もされて、SFやラノベ、アニメ好き以外の一般の人にも彼の名前が知られるきっかけとなった2009年発表の『天地明察』(KADOKAWA 角川文庫 上下巻)も、彼がまだデビュー前の学生だった頃から、いつかは書きたいと思い描いていた題材でしたっけ。
言ってみれば一般小説へと進出するターニングポイントとなった作品といい、今回の、初めて現代モノに進出することとなった本作といい、冲方丁、そういう、自分の中で大事な作品については、かなり慎重に、長い期間をかけて構想を練る傾向が、あるのかもしれませんね。
その分だけ良いモノが読ませてもらえるのであれば、こちらとしては、ありがたいかぎりです。

で、『十二人の死にたい子どもたち』ですけれども、元になっている作品が作品ですから、閉鎖環境に集まった十二人の子どもたちが議論を繰り広げて行く物語になっているだろうなというのは、容易に想像ができていました。
舞台は法廷ではなくて廃業された病院、登場人物達は陪審員ではなくて集団安楽死を望んで集まった少年少女。
そういう違いはあれども、基本的なラインは変わらないだろう、と。

となれば、物語の流れも、おおよその見当はつけられるので、そこから逆算して、各キャラクターの言動を観察するように読み進めていた結果、ラストの展開とか某キャラの立ち位置とかも事前に割と予測できてしまった分だけ、新鮮な感覚で読めなかった部分があったのは、否めないところ。

もしも『十二人の怒れる男』や『12人の優しい日本人』の映画を観たことが無ければ、もの凄く新鮮な気持ちで読めたかもしれないと思えば、そこはやや残念かもしれないのですけれども、とはいえ映画は面白かったですし、この『十二人の死にたい子どもたち』も面白かったので、まあいいか。

 十二人の
 死にたい子どもたち

 (2016/10/15)
 冲方 丁
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今年もシーズンが始まりました!

 2017-02-17
私の好きな自転車ロードレースは、1月の後半には既に2017年のシーズンが始まっています。
ですが、なかなか現地観戦もいけない以上は、そのレースの模様を知るにはネットだったり、CSでの中継だったりを待たなければいけません。
そんな中、多くの選手がシーズンインに選ぶレースの1つ、ツアー・ダウンアンダーの録画中継放送が、いよいよ明日、2月18日土曜日から J-Sports で始まります。
今年初の、自転車ロードレース中継(録画ですが)、ということになりますね。

毎年この時期は、誰がどのチームに移籍したとか、スポンサーの変更などで各チームの名前やジャージがどのように変わったか等を、実際の映像からも把握することになっていくのですが、これが、結構大変だったりします。
注目している選手だったりすればするほど、どうしても、昨年のチーム、昨年のジャージが目に焼き付いていますからね。

また、2017年シーズンということでは、私の好きな選手の1人トム・ボーネンが、今季限りで引退することを発表していたりもします。
年齢的なことや、さすがにスプリントでなかなか勝てなくなってきていることなどを考えれば、確かに、そろそろ引き際であることは否めないのですが、これは、ちょっと寂しい。
もっとも、オーストラリアのアデレード周辺で、プレレースを含めれば7日間にわたって行われるこのツアー・ダウンアンダーには、トム・ボーネンは出場していないのですが。

オーストラリアでは1番と言っていいくらいに大きな大会ですので、気合の入った地元選手がいい走りを見せてくれるのだろうと期待しています。
実は、放送を存分に楽しむ為に敢えてネット等でレースの結果は確認しないようにしてきたので、各ステージの、そして総合の勝者がどうなったのか、知らないんですよ。
これから1週間ほど楽しんで観戦したいと思います。

ツアーダウンアンダー 2017 コースマップ

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62円と52円

 2017-02-14
昨年の12月に日本郵便㈱が発表した内容によれば、今年の6月1日に行われる郵便料金の改訂で、ハガキが今までの52円から62円になるそうです。
SNSや電子メールの利用が増えた結果、郵便を使う人が減少したこと。
郵便配達の経費としての人件費が無視できないくらいの負担になっていること。
それ等から生じる日本郵便の経営への圧迫を回避する為に、やむなく値上げに踏み切らざることになった。
値上げによって利用者がさらなる減少をするかもしれないことを考えても、業績悪化を避ける為には、これも仕方がないということですね。

その一方で、年賀状については今まで通りの料金で据え置きになることも発表されています。
これは、配達数が前年比で5.6%減っていて、かつ、ピークの平成5年と比較すると6割程度にまでなってしまっている年賀状を、これ以上減らしたくないという判断です。
行動に一貫性がないなぁと思わないでもないですが……
年賀状を大量に出さなければいけないような人にとっては、ありがたい話ではあるでしょう。

ただし、注意をしなければならないのは、例え年賀状を52円で購入した場合であっても、ポストに投函したのが一定の時期でなければ、それは10円の料金不足となってしまうということ。
ちなみに、ですけれども、日本郵便㈱の規定するところの年賀状とは、以下の様に定義されているそう。

「12月15日から翌年1月7日の間に差し出された通常はがきであって表面に『年賀』の文字を明瞭に手記して差し出されたもの」

つまり、これ以外の時期に出されたものであれば、それは年賀状では無く、ただの通常ハガキという扱いになるわけです。

年末の慌ただしさに追われていたら年賀状の印刷をする時間が確保できなかったり、メッセージの記入などが遅れたりした場合。
自分のところに届いた年賀状の返事を書くのが遅くなってしまったような場合。
そういったものが、これに引っかかってしまいそう。
また、余った年賀状を、例えば懸賞の応募はがきに流用するといったようなことも、できませんね(10円切手を追加で貼り付ければ、話は別ですが)。

今年の年末は、そういったところに十分注意しなければならないと考えると、これはかなり面倒くさい。
どうせ毎年20枚くらいしか年賀状を作っていないのだから、いっそメールにしてしまうか、とか、何だったら62円にしてもらってもいいよ、とか、そんなことも考えてしまいますが……


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「犬と魔法のファンタジー」

 2017-02-11

作者自身が曰く、「色物好きにおすすめ」であり、かつ「変化球的」ではない「直球な色物になってい」るという作品。
それが、今回の「本館」更新に先がけて紹介する読了本に選んだ、田中ロミオの『犬と魔法のファンタジー』です。

田中ロミオというのは、もともとクセモノであるとしか言えないような作品を書くタイプの人でしたが、これはまた、クセモノな作品を書いてきました。
「いかに夢も希望もないファンタジー作品にするか、ということに心を砕きました」と後書きに書いていますけれど、それでできあがったのが、この、就職氷河期の就活をファンタジー世界に落とし込んだ作品というわけですね。
確かに、夢も希望もありません。

どうせならば最後まで夢も希望も無いままに突っ走っても良かったようにも思いましたが……
そんな憂鬱な作品はさすがに誰も求めていないでしょうし、田中ロミオとしてもそこまでやるつもりは無かったのでしょう。

なお、作品タイトルの『犬と魔法のファンタジー』ですが、これは嘘だとまでは言えないものの、明らかに本作の実際の内容とかなりかけ離れています。
もちろん、それが狙いなのでしょうけれど。
私も大学卒業時の就職活動ではかなり苦労した口なので、(状況は色々と違うところもありますけれど)作中の主人公の苦労や苦悩は良く分かります。
人によってはこれを読むことで精神的にダメージを受けることもあるかもしれない、そんな意欲(?)作です。

……それにしても、よくこの企画を通して実際に発売したなぁ。
こういうのをしれっとラインナプに加えてくるとは、さすがガガガ文庫、普通じゃない。

 犬と魔法のファンタジー
 (ガガガ文庫)

 (2015/7/17)
 田中 ロミオ
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ユニバーサルデザイン、というと、ちょっと違うか……?

 2017-02-08
TOTOのウォシュレット等に代表されるシャワー式トイレについて、操作パネルに記載された様々な機能を示すスイッチに印刷されている記号を国内主要メーカー9社が統一することにしたと、先月半ばにリリースされたニュースで目にしました。
日本を訪れる外国人観光客が増加傾向にあること、2020年に開催される東京オリンピックを視野に入れ、ピクトグラムを統一することで、視覚的かつ直感的に各操作が分かるようなデザインに統一するのが狙いだとか。

現在はこのピクトグラムを国際標準化すべく、ISOへの申請を準備しているということですが、これは、確かに必要なことですね。
日本にやってくる外国人向けだけではなくて、高齢者への配慮という側面から考えても、業界で統一したデザインにするというのは素晴らしい動きだと思います。
こういったピクトグラムのデザインだけではなくて、メーカーによってまちまちになっているものはその他にも色々とあるので、その辺りも、このトイレの操作ボタンの後に続いてどんどん統一して行って欲しいですね。

こういうホスピタビリティーの表し方は良いのですが、一方で、オリンピックを前にして、外国人観光客への対応として企業などが発表したものの中には、何やら訳の分からないことも幾つか出てきていたりします。
ここで例を出してあげつらおうとは思わないですけれど、相手の表情をうかがって迎合することは、ホスピタビリティーの正しい表れでは無いでしょう?
宗教を筆頭にした文化の違い、習慣の違いに対する配慮は必要ですが、基本は、「郷に入っては郷に従え」というところに求められるべきだ、と私は思っているのですが……

少数の意見を気にしすぎたり、言われる前に余計な気を回す、なんていうことは止めにして、必要なものと不必要なもの、是と非とをしっかりと見極めた「おもてなし」をしたいものです。






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「虐殺器官」

 2017-02-06
2009年の3月に34歳の若さで肺ガンにより亡くなったSF作家、伊藤計劃。
その著作をノイタミナで劇場アニメ化する、Project-Itoh は、本来の第2弾として計画されていた 『屍者の帝国』 と、第3弾として計画されていた 『ハーモニー』 は2015年の年末に公開されたものの、第1弾だった 『虐殺器官』 は、当初の制作スタジオの倒産などの影響もあって、新スタジオを設立しての制作の継続こそは発表されていたけれども公開時期だけは決まらないままになっていました。

しかし、その 『虐殺器官』 が、2月3日に満を持して公開開始。
伊藤計劃の作品はもともと好きですし、まさしく待望の、と形容していい映画ですので、これを観ないという選択肢は、存在しません。
早速、チケットの予約をして映画館まで行ってきました。

端的に言えば、渋い作品に仕上がっていたな、という感じです。
それは、物語が、というだけではなく、キャラクターも、演出も、そして登場してくる様々なもののデザインも含めて。
もともとの原作が、そんなに派手なものではなかっただろう、という意識もありますし、村瀬修功が監督をするのだから、必然的にそういうものになってくるに違いない、という予想もしていました。
なので、映画のテイストについては、まぁそうなるだろうね、という感じで、意外なことはありませんでした。
戦闘シーンの派手さとか、そういう画的な見どころもありつつも、基本は会話劇、それも、かなり情報が詰め込まれた密度の高いものなので、読み直しのきかない映像だと厳しいところがあるのと、どうしても地味目になりがちなのは、エンターテインメントとしてはマイナス要素ですけれど、『虐殺器官』を映像化するとなれば、その辺は致し方の無いことでしょう。
色気のあるキャラクター、ストイックな軍事描写等、村瀬修功が本作を担当することになった経緯は分かりませんが、その決定をした人は、実にいい判断をしたと思います。

こういう原作モノの映像化の場合には、原作との相違点、改変ポイントというのが問題になるわけですが、この 『虐殺器官』 においても、原作と違っている部分というのは、存在します。
それも、結構大きな要素がバッサリとカットされていたりしるので、そこについては、原作読者の賛否を呼びそう。
個人的には、その結果として、主人公のクラヴィスと彼が追い詰めようとしたジョン・ポールとの間に、ある種の同類性というか、両者が表裏一体の関係性を持っているかのような印象が出てきているので、これはこれで、アリな改変だと思っています。

本作はかなりストイックにアニメ化された作品ですので、セリフを含む映像から与えられた情報を自分で咀嚼しないと、話の流れが分かりにくいところがあるかもしれません。
多少のバイオレンスな描写もあるので、そういう意味では、単純で爽快な物語を観たいと思う人には、向かない作品と言えます。
それを踏まえて、本作を観に劇場に行くか行かないか、後は、好みの問題ですね。
個人的にはかなり気に入った映画ですので、是非、多くの皆さんに観てもらいたいところですが。


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「魔術師のおい」

 2017-02-04
岩波書房から瀬田貞二さんの翻訳で出ていたナルニア国物語のシリーズが、光文社から新訳で出はじめたのは、昨年の9月のこと。

岩波版が出版順にナンバリングされるのに対し、こちらは作中の時間軸に沿った順番という違いがあります。
その為、例えば岩波版で1冊目になっていた『ライオンと魔女』は、こちらでは『ライオンと魔女と衣装だんす』として、シリーズ2冊目として刊行されています。

海外でも最近はこの並びでの刊行が主流だといいますが、個人的には、やはり小さい頃から自宅にあった岩波版の順番でないと、しっくりこないところがあるのというのは、正直なところ。
また、幼少時から瀬田訳に馴染みきっている身としては、新訳といわれて、まず不安を覚えてしまうのですが……
実際に、今回、「本館」に先がけた読了本紹介に採り上げることにした、第1回配本の『魔術師のおい』の実物を読んでみた限りでは、まずまずという感じ。

ちなみに、岩波版が今では絶版になったわけでもないのに、別の出版社から新訳版が出ることになったのは何故なのか。
これはどう考えても、C.S.ルイスの著作権が切れてフリーになったのでしょう。
そこで調べたところ、彼の没年は1093年11月22日。

日本において法律で保障される著作権は没後50年です。
ルイスが亡くなったのは第二次大戦が終わってサンフランシスコ講和条約が交わされた後ですから、約10年半(ルイスの母国イギリスの場合で3,794日)の戦時加算も無いから、単純計算で2013年末までですね。

やはり、今はもう著作権がフリーになっています。

各巻の並び順以上に翻訳者の違いというのは結構大きな要素ですが、とりあえず本作を読んだ時点では、そこまで違和感を覚えずに済んでいます。
私自身は、今までナルニア国物語シリーズを手元にしてはいませんでしたし、これなら光文社版で買い揃えるというのもありかも。

 魔術師のおい
 ナルニア国物語 1
 (古典新訳文庫)

 (2016/9/8)
 C・S・ルイス
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Francis Cabrel 「hours-saison」 他

 2017-02-02
私が Francis Cabrel のことを知ったのは、ベルギーに暮らしている長姉から、「これ、いいよ」と教えられたのが最初でした。
時期ははっきりとは覚えていないのですが、多分、2002年に姉のところに遊びに行った際に、だったかな……?

それで、とりあえず幾つかのアルバムを手に入れてみたのですが、なる程、これは確かに彼女が強くお薦めしてくるだけあって、かなりいい感じでした。
「フレンチポップ」という言葉から想像するのがどういうものか。
Sylvie Vartan だったり、France Gall だったり、Michel Polnareff だったり、Clémentine だったり、Serge Gainsbourg だったり。
挙げられる名は、人によってそれぞれでしょう。
私の中にも、単純に「これこれこういうものです」と説明するのはちょっとできないのですが、「フレンチポップ」とは大体こういうのを指すよね、というイメージがあります。
で、この Francis Cabrel は、その私の中の「フレンチポップ」のイメージの、わりとド真ん中を行くような音楽をやっています。

Francis Cabrel は1953年生まれのイタリア系フランス人、ということですから、今年で 64歳 になる、のかな?
ノーベル文学賞を受賞した Bob Dylan が好きで、ギターをつま弾くシンガー・ソング・ライター な彼は、現地フランスでは相当な人気ミュージシャンで、ヒット曲も多数あるようです。
日本では、その知名度はあまりないようですけれど……。
歌詞がフランス語で、何を歌っているのかがなかなか分からないというのが、結構大きなポイントだと思いますが、特にこういう、じっくりと聴かせるタイプの音楽である場合、パッと聴いて、歌の内容が理解できないのは、セールス的にはかなりのマイナスになるでしょうから、まあ仕方が無いのかな。
そもそも、レーベルの方で、どれだけ日本に売り込みをかけたのか、わかりませんし。
Francis Cabrel 本人にしても、日本での売り上げを求めてプロモーションなどをせずとも、既に十分過ぎる程の額の稼ぎは本国の方で叩き出しているので、何としてでもここに市場を開拓しようと、貪欲になる必要性は無いでしょうしね。

ともあれ、そうして買った数枚のアルバムの中で、私がちょっと気に入った曲の動画を2つと、それ等の収録されているアルバムのジャケット写真を、いつものように貼ってみます。
何せビッグネームなミュージシャンですので、これ以外の曲も Youtube には色々とアップされていますから、今回のエントリを読んでちょっと気になった、という人は、それ等もチェックしてみては、いかがでしょうか。





 hours-saison
 (2015/9/11)
 Francis Cabrel
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