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「プラスチックの恋人」

 2021-06-12
刊行当時にちょっとした問題作として話題になった、山本弘の『プラスチックの恋人』を読みました。
何がどういう風に問題作だったのかは、公式の粗筋を読んでもらえればお分かりいただけるだろうと思うので、例によって引用してみましょう。
こんな感じです。

仮想現実“Virtual Reality”と人工意識“Artificial Consciousness”が実現したセックス用アンドロイド――オルタマシン。その中でも少年や少女の姿形をした未成年型オルタマシンの使用は、日本国内で賛否を問う激論を巻き起した。フリーライターの長谷部美里は、社会問題となりつつあるマイナー・オルタ利用の実態を取材するため、美しい12歳の少年の姿形をしたオルタマシン、ミーフと出逢う……。ヒトは、ヒトならざるものと愛し合うことができるのか。SF最大の禁忌を描く著者渾身の問題作。


つまり、いわゆるセクサロイドと人間の関係を題材にした作品ですね。
同時に、機械に知性は宿るのかとか、人権はあるのか、人に奉仕する為に作られた機械の「幸福」はどこになるのか、というような、SFとしてはかなりオーソドックスなテーマを扱った作品にもなっています。

発表当時、「性」を大々的に扱ったSF作品としてあちこちで採り上げられていたという記憶があるのですが、そこから想像する程には、エロスの要素は多くないように思います。
もちろん、この辺りの感じ方は人それぞれなので、これで十分以上にエロいじゃないか、という人もいらっしゃるでしょうけれど。
個人的な感想としては、どうせならばテーマの掘り下げについても、もうちょっと深くやってもよかったのではないかなという気もしないでもありません。
つまり、全体的に大人しめというか、わりと無難なところに着地させてしまっている感があるのです。
といって、面白くないわけでは無くて、結構楽しんで読めた作品でもあるのですが。

ところで山本弘といえば2018年の5月10日に脳梗塞で倒れて退院後も麻痺が残り、それ以来、懸命にリハビリに取り組んでいることが、ご本人がカクヨムに投稿している文章で書かれています。
少しでも回復していかれることを願うばかりです。
一度読んでおきたいなと思いつつまだ購入していない著作を買うことが支援になればとも思いつつも、それ等は大概絶版になっているので、古本で購入しても印税収入にはならないしなぁというのが、残念なところ。
電子書籍は個人的に趣味では無いし、本は紙で読んでこそという主義にも反するのですが、それも検討しなければならない、かな?


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2021年のドーフィネ

 2021-06-08
ツール・ド・フランスの前哨戦として多くの選手が調整に出場するクリテリウム・ドゥ・ドーフィネ。
フランス南東部にあるドーフィネ州を舞台にして繰り広げられる8日間のステージレースが、無事に全日程を終了しました。
新型コロナウイルス感染症の状況は国によって異なりますし、一概に言えることではないのですが、こうして公道を使って開催されるレースが、ジロ・デ・イタリア、クリテリウム・ドゥ・ドーフィネと2つ続けて成功に終わったことは、1つの希望と言っていいことだと思います。
ジロを制したイネオス・グレナディアーズのエガン・ベルナルが、大会終了後にコロナ陽性になったということはあるにせよ……

今回のドーフィネも、ツールでの総合を狙う選手とそのアシスト陣が出場してきていましたが、昨年覇者であるUAEチームエミレーツのタデイ・ポガチャルと、総合2位だったユンボ・ヴィスマのプリモシュ・ログリッチという2人のスロベニア人選手は、独自に調整を行っているらしく、こちらには未出走。
ですので、その2人が本番直前にどれくらい仕上げてきているのかは分からないものの、それ以外の有力候補がかなり順調にツールの準備を進めていることがよく分かった大会だったのではないでしょうか。

今年のドーフィネで総合優勝をしたのは、イネオス・グレナディアーズのリッチー・ポート。
昨年のツールで総合3位に入り、念願だった最終日の表彰台に上がって喜んでいた姿も記憶に新しいポートですが、イネオスのエースはツール総合優勝を目指すゲラント・トーマスかと思いきや、このドーフィネではリッチー・ポートに総合を取らせるという戦略に出たようです。
そしてリッチー・ポート、実はドーフィネの総合優勝は今年が初めてとのこと。
今までに1回くらいは勝っているようなイメージがありましたが、そうですか、初優勝ですか。
チームの総合エースであることからは引退して、アシストに徹すると加入したイネオスでドーフィネ初制覇とは、本当に、人生は何がどうなるのか分からないですね。


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「万博聖戦」

 2021-06-05
昨年11月発売の牧野修『万博聖戦』を、半年以上積読で寝かせてしまっていましたが、そろそろかなと思ってこのタイミングで読了しました。

中学の同級生である森贄人と御厨悟と波津乃未明は気づいてしまった。子供こそが本来の人類であり、侵略者である大人からの支配に抗って、ずっと知られざる戦いを繰りひろげてきていたのだ。そして1970年の大阪万博会場で、三人を巻き込んで子供と大人は激突する!お互いのユートピアを懸けた子供と大人の戦いに翻弄されながら、それぞれの宿命に立ち向かった少年たちの思春期が人類の未来へと繋がる奇跡を記した黙示録。


というのが本作の裏表紙に記載された公式の粗筋です。
子供が成長すると自然に大人になるのではなく、大人というのは子供とは全く別の存在であり、子供がオトナ人間に憑依されたものが大人なのだ、というのが本作の基本になる設定。

世代間格差、ルールを強要する大人への反抗、そういったものはテーマとしてはよくあるものです。精神生命体のようなものに憑依されて人間とは別の存在になるというのも、そこまで珍しいものではないでしょう。
そういう基本材料をどうアレンジしていくのか、調理していくのかが、作品とする際のミソになってきますよね。

その観点から考えると、本作、独自性を出せているような出し切れていないような……
その辺りはちょっと物足りなさを覚えましたし、物語全体として(作品の評価として)も少々微妙かもしれないと個人的には感じました。
「牧野修の最高傑作」的に高評価を付けている人も多いのは知っています。
面白いことは面白かったですし、今回も発想力には感嘆させられたのですが、何となく今一つに感じてしまったのです。

これは、私の中にあった、牧野修ならばもっと悪趣味一歩手前まで暴走してくれるだろうという読み始め前の期待に対し、思っていたよりもスッキリまとまっていたという読後の第一印象があったからかもしれません。
とはいえ、改めて客観的に振り返ってみると、現状で十分、アクの強い作品だったりするわけです、本作。
特に後半は、なかなかにグロテスクさも出ていて、そこを捉えると、私が望んでいたような牧野修節が炸裂しているとも言えます。
なのに、何故、私は前述のような読後感を抱いたのか?

本作を語る時に、新型コロナウイルス感染症問題に直面している(本作執筆時である)2020年の日本、そして世界というものを無視するわけにはいかないでしょう。
インタビュー等でちゃんと確認をしているわけではないですけれど、この作品の中身に緊急事態宣言や外出自粛要請といったものが影響を及ぼしているのは、否定できないとは思います。
だからといって、それを前提として、作品にそれを投影しつつ読んでしまうのも、何だかそれはそれで違うんじゃないかなと、個人的には感じてしまうわけです。
あるいは、読了した私がちょっと微妙な気分になったのは、そういうところに原因があったのかもとも思います。

しかしながら、この辺りは難しいところですよね。
作品を読む、評価するに当たって、その作品が執筆された時代背景というのは当然無視してはいけないわけですし。
もちろん私の評価が微妙なのはそれだけのせいではなくて、加えて、もっとメーターが降り切れるくらいに暴走・妄想がさく裂していた方が好みだった、というのもあるでしょう。
うーん。難しいな。

何年かしてから再読でもしたら、また違った感触もあるかなという、そんな作品でした。



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ハンガリーといえば……?

 2021-06-03
ハンガリー、といって皆さんは何を連想されるでしょうか。
私は、首都がブダペストであること、刺繍、ブラームスの「ハンガリー舞曲」といったくらいしか思い浮かばなかったりします。
名前は昔からよく知っているのですが、具体的な情報というと、これくらいしか知らないのは、ハンガリーの人に非常に申し訳ないのですけれど、一般的にはどうなんでしょう、もっと多くのことが広く認知されていたりするのでしょうか。

私と大差ない、あるいは刺繍も「ハンガリー舞曲」も知らないという人の為に、ハンガリー舞曲ではおそらく一番有名であろう第5番の動画を貼っておきます。
ほとんどの人が、音楽の授業で聴いたことがあるのではないかと思うのですが。



ともあれ、そんなハンガリーで開催されている全5ステージのレース、ハンガリー・ツアー(ツール・ド・ハンガリー)が、この2021年に日本で初めて J-Sports により放送されました。
ただし、生中継ではなくて、全日程が終わった後の6月1日に、ダイジェスト版として、なのですが。

よく知らない国の知らないレースを観るということには、新しい景色、街並み、史跡などといったものと出会えるという楽しみがあるのですが、ダイジェスト版だと、どうしてもそれは少なめになってしまいがち。
レースのキモになる部分や、ゴール前スプリントなどを中心に編集せざるを得ないですし、放送時間にも制限がある以上は、仕方がないことなのですが、とはいえ、そこに残念さがどうしても存在してしまうのは否めません。
それでも、端々に綺麗な風景があり、特に最終第5ステージの首都ブダペストはなかなかに美しい都市でした。
いつか一度、旅行で行ってみたいと思わせられるくらいに。
そう思わせた時点で、レースはある意味で成功と言っていいですよね。

このレースで総合優勝を成し遂げたのは、バイクエクスチェンジのダミアン・ホーソン。
ポイント賞はバーレーン・ヴィクトリアスのフィル・バウハウス、山岳賞は VosterATS のマチェイ・パテルスキーということに。
来年は、生中継で観てみたいものですね。

そうそう、ハンガリーといえば、料理も結構有名らしいのです。
都内にもちょっといい感じのハンガリー料理店があるらしいので、コロナが落ち着いたら、一度行ってみたいなぁと思っています。


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2021年のジロ・デ・イタリア覇者

 2021-06-01
2021年のジロ・デ・イタリアが3週間の日程を終えて、無事にミラノにゴールしました。

そんな2021年のジロの総合優勝の証であるマリア・ローザを獲得したのは、イネオス グレナディアーズのエガン・ベルナル。
2019年のツール・ド・フランス総合優勝者ですね。
またベルナルは25歳以下という条件を満たすので、新人賞のマリア・ビアンカも同時に獲得しています。
ベルナルといえばツールを制した後に背中の痛みが発症して、それ以降の成績が振るわなかったのですが、このジロでの優勝で復活したと言っていいのではないでしょうか。
3週間の日程の中ではバッドデイで山岳でライバルに置いていかれてしまった日もありましたが、その時も最低限の失敗に収めていましたし、第2休息日までの山岳ではとにかくもの凄く強かったので、この結果には何の文句もありません。

ポイント賞のマリア・チクラミーノは、ボーラ・ハンスグローエのペーター・サガン。
サガンは今回のジロではかなりクレバーに、不必要な力を使わずに、常にライバルとのポイント差を確認しつつ、取るべきところだけしっかりポイントを取り、そうでもないところでは無理をしないで集団に残るという姿を見せていました。
以前のサガンに比べると若干の物足りなさもないわけではありませんが、さすがに彼も段々若くなくなってきているので、こういうやり方に変えてきているのかもしれません。
なお、サガンはこれが初のマリア・チクラミーノです。
イメージとしては既に何枚か獲得している感じなのですが、ジロは今回が最初。
ブエルタ・ア・エスパーニャのポイント賞も獲っていないので、次はそれかな……。

山岳賞のマリア・アッズーラは、AG2Rシトロエンチームのジョフリー・ブシャール。
2019年のブエルタ・ア・エスパーニャで同じく山岳賞を獲っていますから意外とまでは感じないのですが、しかしジロ開幕前はブシャールが山岳賞とは想像していませんでした。
コース的に、総合争いの選手達がどんどん山岳ポイントを取っていって、最終的には総合優勝者が山岳賞も獲得することになるのではないかと思っていたので。
粘りの走りでポイントを加算した結果、総合争い以外のブシャールが山岳賞を得たというのは、この賞の存在意義的にも良かったのではないでしょうか。

グラン・ツールの初戦を飾るジロがこれだけ面白いと、続くツールやブエルタにも、大いに期待したくなってきます。
オリンピックは……非常に面白いコースが設定されているのは確かなので、いいレースになるとは思うのですが、そもそも開催がどうなるのか……。


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